なくしたものとか、見つけたものを、音楽とか、文章とか、絵画にしてみました。
ひょっとしたら、なくしたものが、見つかるかもしれません。

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【文】夢の話

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夢を見た。

変わった夢だった。

 ・・・

夢の中で僕は猫だった。

君の家で飼われている猫。

 

普通と違うのは、僕は「他の星から来た猫」だったことだ。

 

君のお父さんは、その土地の領主か何かで、長いサーベルとか、おっきな猟銃とかをいつも持っていて、使用人が悪いことをしたりすると、怒って撃ったりするんだ。

自分が間違ってたことが分かると素直に謝るんだけど、撃ってからでは遅いと思うな。

僕も何度も危ない目に遭ったけど、何とか切り抜けた。

危ない目に遭うことよりも何よりも辛かったのは、毎年12月25日になると星に帰らないといけないことだった。

大好きな君のところを離れて、しばらく君に会えなくなるのは本当に辛かった。

 ・・・

そして13年が経った(夢の中ではそういう設定だった)。

僕はすっかりよぼよぼの老猫となり、一日の殆どをうとうとして過ごすような毎日だった。

今年はなぜだか12月25日を過ぎて、27日になっても、君のお母さんは「星に変える時間よ」とは言わない。

年も押し詰まったある日、君のお母さんがこう言った。

「今年は星に帰らなくていいわ」

 

僕は窓際の陽だまりで君の足元に巻き付いてうとうとしながら、「僕はもうすぐ死ぬんだろうな」と思った。

でも僕は幸せだよ。

大好きな君のそばでいられるんだから。

それにもう星に帰らなくてもいいんだ。

もうすぐ大晦日だね。そしてまた新しい年が来る。

僕は君のそばでいられるんだね。

 

 ・・・

そこで目が覚めた。

 

とても幸せな夢だった。

ブラインドの隙間から入ってきたその年最後の朝日が、小さな塵をキラキラと光らせているのを、僕は寝ころんだままずっと見ていた。

 ・・・

みなさん、良いお年を。